パソコンを構成するパーツのひとつに「メモリ」があります。
お絵描き向けのクリエイターPCにとって快適な作業環境を構築するためには、メモリ選びがとても重要であり、サイズが大きいほど出来るコトが増えていきます。
自分のやりたいコトをするには、具体的にどれくらいのメモリが必要なのか?
そんな疑問を持った方に向けて、この記事では「8GB」「16GB」「32GB」「64GB」のメモリサイズで出来るコトを解説しています。
パソコン選びにお役立てください。
そもそも「メモリ」とは?
メモリはパソコン内で読み出したデータを一時的に保存しておく場所を指します。
主にソフトを動かすために必要な「今すぐほしいデータ」が保存されており、メモリの要領が大きいほどパソコンの処理速度が向上します。
役割的にはストレージと少し似ていますが、ストレージはデータを恒久的かつ大量に保存しておくのが目的なので、メモリのようにパソコンの処理速度を上げることはできません。
例えるならメモリは「作業机の広さ」、そしてストレージはデータを収納するための「引き出し」か「本棚」にあたるでしょう。
実際にペンを持って絵を描くとなれば、狭い机より広い机の方がずっと描きやすくなると思います。
パソコンも同じことで、メモリ(作業机)が大きいほど自由な領域が広がり、作業に集中しやすくなるのです。
とくにお絵描き向けのクリエイターPCでは、マルチタスクが頻繁に起こります。
複数のレイヤーを展開したり、ブラウザで作画資料を表示したり、3D素材を使用したり、他アプリケーションと同時に起動したりなどなど……
これらの動作を快適に行いつつ、創作活動に没頭できる環境を手に入れたいのなら、相応のメモリを選びましょう。
それぞれのメモリサイズで出来るコト
ここからは、それぞれのメモリサイズで出来るコトを詳しく解説しています。
予算と自分の使い方に合わせて、適切なサイズのメモリを選んでください。
お試し感覚で始めるなら「8GB」
- オフィスソフトの起動
- 複数にわたるWebページの閲覧
- 「CLIP STUDIO PAINT」や「SAI」での簡単なお絵描き(※一部機能に動作不良が起こる可能性があります。)
「8GB」はお試しでデジタルイラストを始める方におすすめです。
一般的には、Wordをはじめとしたオフィスソフトを動かしたり、複数のウェブページを閲覧するぐらいの家庭用パソコンに求められるメモリサイズになります。
パソコンとしての基本的な性能を抑えつつ、イラストを描くのに最低限必要な操作性を確保するには、8GBが最低ラインになるでしょう。
というのも、3D素材や複数のレイヤーを使用した場合、メモリ不足でフリーズを引き起こす可能性があるのです。
あくまでも最低限の操作性を維持するのに必要なメモリサイズなだけであって、必ずしも快適に動かせるとは限りません。
標準的なクリエイターPCが欲しいなら「16GB」
- 高解像度の素材を使用したデザインの編集
- 複数のソフトウェアを同時に使ったマルチタスク
- 「Photoshop」や「illustrator」、「CLIP STUDIO PAINT」での快適なお絵描き
「16GB」は標準的なクリエイターPCが欲しい方におすすめです。
複数のソフトを起動しつつ、容量の大きい素材データを扱っても動作が安定するため、パソコンショップで販売されているほとんどのクリエイターPCは、16GBがデフォルトとされています。
相応のグラフィックボードを搭載すれば、3D素材の使用やLive2D、Vtuber用モデリングといった高負荷な作業も可能になるでしょう。
イラストだけでなく、漫画も制作するなら16GBを基準にご検討ください。
ワンランク上の速さと快適性を求めるなら「32GB」
- 3D動画のレンダリング
- 最新のPCゲームやお絵描き、歌ってみたなどの配信活動
- 「Premiere Pro」や「After Effect」を使った4K動画の編集
「32GB」はプロ志向のクリエイターPCが欲しい方におすすめです。
先にも述べたイラスト系の制作に加え、PCゲームや動画編集、配信活動にDTP、3DCGモデリングなど、あらゆる分野において作業効率が格段に上がります。
表現の幅が広がるため、お絵描き以外の創作活動にもチャレンジしやすくなるでしょう。
とくに映像コンテンツを制作するなら、32GBは欲しいところです。
16GBでも動画編集が出来ないわけではありませんが、大量のエフェクトを盛り込んだり、4Kクラスの高解像度素材を編集するには、メモリ不足が否めません。
実際に「Adobe Premiere Pro」や「Adobe After Effect」では、32GBが推奨メモリとされています。
快適性と表現力を求めるなら32GBをご検討ください。
あらゆる可能性を突き詰めていきたいなら「64GB」
- 4K、8K動画の編集
- 複雑で高品質な3DCGモデリング、及びレンダリング
- 動画、アニメ、画像等を用いた高度なモーショングラフィックの制作
お絵描きを目的としたクリエイターPCに搭載した場合、まず間違いなくオーバースペックになるでしょう。
専門性の高いクリエイターでもない限り、日常生活で64GBを使う場面は絶対にありません。
次世代のPCゲームやソフトウェア次第では、64GBが標準になる可能性もなくはないですが、今から備えても購入費用が余計に掛かるだけで、ほとんどの方にとっては無用の長物です。
それでも64GBのメモリを選ぶもっともらしい理由を挙げるなら、お金をかけることに満足するかどうかだと思います。
メモリを選ぶときの注意点!
ここからは、メモリを選ぶときの注意点について解説しています。
パソコン初心者の方が陥りやすい失敗なので、自分で組み立てたり、パソコンをアップグレードするときはお気を付けください。
メモリには規格がある!
メモリにはパソコンの種類や世代によってそれぞれ規格があり、搭載するパソコンに合ったメモリを選ぶ必要があります。
現在(2024年5月時点)の主流は「DDR4」と呼ばれるメモリですが、一世代前だと「DDR3」、最近だと「DDR5」という規格が使われ始めています。
ちなみに「DDR」の後に表記されている数字は、メモリの世代を表しており、2006年頃に発売されたパソコンには「DDR2」のメモリが使われていました。
そして、これらのメモリには互換性がないため、DDR4対応のパソコン(マザーボード)にDDR5のメモリを挿すことはできません。
また、デスクトップ用とノートPC用によってもメモリの種類が異なります。
たとえ「DDR」の規格が合っていたとしても、デスクトップ用のメモリをノートPCに挿すことはできないので、購入前にメモリとパソコン(マザーボード)の規格が一致しているかを確認しておきましょう。
メモリの性能を十分に引き出すにはそれ以外のパーツも大事!
パソコンを構成するパーツの中でも「メモリ」はとくに重要です。
しかし、メモリだけを高性能なものにしても、その性能を引き出すCPUがしょぼければ意味がありません。
前述したようにメモリは「作業机の広さ」、ストレージはデータを収納する「引き出し」か「本棚」にあたります。
道具をたくさん置ける広い作業机の方が仕事は捗りますが、そこで仕事をするのはあくまでもCPUです。
パソコンの「脳」にあたるCPUが高性能であれば、広い作業机も賢く使いこなせますが、性能が低ければ、広い作業机を持て余してしまい、捗るはずの仕事も捗りません。
そうならないためにもパソコンは、バランス良く組み立てるのが大切です。
あとがき
8GBのメモリだと動作が固まる可能性があるため、これからデジタルイラストに挑戦する方は16GBを基準に選ぶと良いでしょう。
お絵描きだけでなく、PCゲームや配信活動もしたいのなら、もう一段階上の32GBがおすすめです。
64GBのメモリは、多くの方にとって無用の長物となる可能性があるので、あまり推奨はしません。
メモリの規格や他パーツとのバランスに気を付けつつ、自分の理想が詰まった最適なパソコンを手に入れてください。