この記事では、森下みゆ先生による学園漫画「尾守つみきと奇日常。」を紹介しています。
「読む」ことも「描く」ことも大好きな漫画オタクが実際に読んでみて面白いと思ったポイントや感想について語っており、ネタバレを目的としたものではありません。
「尾守つみきと奇日常。」がどんな作品で、どこに見所があって、どう面白いのか?
読んでみたいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。すでに読んだことのある方は「そんな見方もあるのか」と楽しんでいただければ幸いです。
執筆時点での読了巻数:2巻
「尾守つみきと奇日常。」の作品情報

「多様性」が当たり前になった現代。
かつて幻人と呼ばれていた人ならざる者たちは、あらゆる場所で社会に溶け込むようになり、人間も幻人も共生するのが当たり前となっていた。
そんなニューノーマルな現代社会に生きる真層友孝(しんそうゆたか)くんは、私立景希高等学校でウェアウルフの尾守つみき(おがりつみき)さんと出会う。
天真爛漫なつみきさんと慌ただしくも楽しい学園生活を送っていくなかで、アイデンティティに悩んでいた友孝くんは、自分の正直な「気持ち」を見つけていくのだった。
「尾守つみきと奇日常。」のおすすめポイント2選

ケモナーの心を射止めるキャラクターデザイン!
獣人(ウェアウルフ)であるつみきさんのデザインには、ケモナーの心を射止めるポイントが幾つもあります。そのなかでも「獣耳」の描写については、ケモナーの嗜好を良く理解していました。
表紙のつみきさんを見て頂ければ分かるように、本来なら人耳がある場所に獣人特有の獣耳が生えているのです。
「だから何だよ?」と思われる方もいるでしょう。
しかし、よくよく思い出してみて欲しいのですが、漫画やアニメで登場するほとんどの獣人キャラは頭部に獣耳があり、人耳は髪のボリュームで隠すように描かれていたと思います。
果たして、髪で隠れているその場所には人耳があるのか、あるとしたら、耳として機能するのは獣耳と人耳のどちらなのか、そもそも耳は4つもあっていいものなのか……ケモナー界隈では、これを「4つ耳問題」と呼んでいます。
こういった曖昧にされやすい部分をはっきりと描いているところに獣人キャラへのリスペクトが感じられました。一人のケモナーとして推せずにはいられません。
人間と亜人によるニューノーマルな青春!
誰もが経験したことのある当たり前の日常を「人間と幻人(亜人)のニューノーマルな学園生活」に落とし込むのが上手すぎて、非日常的な世界観でありながらもどこか親近感が湧いてきます。
何かと「多様性」を求めてくる現代社会の模範解答を見ているかのようでした。
むしろ、幻人という存在があったからこそ、普通の高校生らしい悩みを抱えた友鷹くんがより身近に感じられるのかもしれません。友達との付き合い方に臆したり、自分が本当にやりたいことが見つからなかったり、他人を羨ましいと思ったり……
思春期特有の複雑で面倒くさい感情の解像度が高過ぎて、共感が止まらなくなります。
「尾守つみきと奇日常。」を読んでみた感想
冒頭から始まる友孝くんのモノローグに共感してしまい、あっという間に惹き込まれました。
つみきさんが可愛いのはもちろんですが、友孝くんをはじめ、出てくるキャラクターがみんな初々しさに溢れていて、めちゃくちゃ和みます。初登場時はちょっと嫌な印象だったナンパ吸血鬼くんも、中々に可愛い野郎だったみたで、1巻を読み終わる頃には、お気に入りのキャラクターになっていました。
忌避されがちなテーマを扱っているにも関わらず、それぞれが持つ個性や性質を否定することもないので、不快感が全くありません。むしろ、個性を認め合う優しさに溢れた世界観に心が癒されます。
あとがき
おすすめポイントで少しだけ解説した獣人キャラの「4つ耳問題」。
どちらかと言えば、私は2つ耳派なのですが、この記事を執筆するにあたって、調べ直したところ、多くの方が独自の見解を述べられていて、とても興味深かったです。
とくに「獣耳は獣の声を聴くためにあって、人耳は人の声を聴くためにある」という見解には、妙な説得力を感じました。それでも、人の顔に耳が4つもある違和感を払拭することはできなかったので、私は依然として2つ耳を推させていただきます。
もしかしたら、私のような面倒くさいケモナーがいる限り、獣耳論争に終わりはないのかも……