【感想&レビュー】フィクションで語られれる戦争のリアル!|ペリリュー -楽園のゲルニカ-

【感想&レビュー】フィクションで語られれる戦争のリアル!|ペリリュー -楽園のゲルニカ-

この記事では、武田一義先生による歴史漫画「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」を紹介しています。

「読む」ことも「描く」ことも大好きな漫画オタクが実際に読んでみて面白いと思ったポイントや感想について語っており、ネタバレを目的としたものではありません。

「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」がどんな作品で、どこに見所があって、どう面白いのか?

読んでみたいと思っている方はぜひ参考にしてみてください。すでに読んだことのある方は「そんな見方もあるのか」と楽しんでいただければ幸いです。

この記事を執筆した時点での読了巻数:最終巻(11巻)

「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」の作品情報

ペリリュー -楽園のゲルニカ-
武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』(白泉社)
「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」のココが好き!
  • 3頭身のキャラデザから伝わってくる戦争のリアル!
  • 実際にあったであろう身も蓋もない「死に様」を真摯に描く姿勢!
  • 絶望的な戦況で揺れ動く兵士たちの悲痛な感情!
「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」のあらすじ

太平洋戦争末期のパラオ諸島「ペリリュー島」。

サンゴ礁の海に囲まれ、美しい森に覆われた楽園にはマンガ家志望の田丸均(たまるひさし)をはじめ、多くの若者たちがアメリカ軍と戦う兵士として駐在していた。

しかし、侵攻するアメリカ軍は兵員数4万と艦艇800隻に対し、日本のペリリュー島守備隊はわずか1万……。圧倒的な兵力差を前に日本軍は、洞窟を拠点とした徹底的な持久戦を強いられてしまうのだった。

日米合わせて5万人の兵士が殺し合う狂気的な戦場で、若者たちは何のために戦い、何を思って生きたのか?

過酷な時代を生き抜いた人たちの「リアル」に迫る!

「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」のおすすめポイント2選

著:武田一義,平塚柾緒(太平洋戦争研究会)
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教科書には載らない煩雑とした兵士の葛藤や苦悩が描かれている!

「お国のために勇ましく戦って死ぬのが誉れ」と信じられていた時代、戦場に身を置いていた兵士たちは果たして本当にそう思いながら戦いに臨んでいたのだろうか?

歴史の教科書は戦争があった事実を教えてはくれますが、そこにいたであろう兵士のことは何も教えてくれません。

この漫画はキャラクターこそフィクションではあるものの、彼らから伝わる感情は真に迫るものがありました。ヒロイズムに酔う兵士の狂信的な言動をはじめ、何としてでも生き延びたいと思う兵士の醜悪な一面が垣間見える瞬間は、否が応でも「戦争」の異常性を突きつけられます。

本来なら真っ当に生きていけたはずの若者たちが狂気的な戦場で正気を失っていく様子に絶望を禁じ得ません。戦時下における極限状態の人間をありのまま描いていたと思います。

ただでさえ数少ない戦争経験者が急速に減少している現代において、この漫画が戦争の記憶を次世代に伝えていくツールのひとつになることは間違いないでしょう。

デフォルメされた絵で描かれる戦争のリアルな「死」!

最初こそデフォルメされた可愛い絵に目が行きがちですが、読み進めていくほど戦争の惨禍をまざまざと見せつけてきます。リアル調の絵で描かれていたら、最後まで読めなかったかもしれません。

作中では傷口にウジ虫が湧いたり、火炎放射器で黒焦げにされたり、敵の死体を損壊させる様子もぼかすことなくしっかりと描写されていました。デフォルメされているとは言え、絵から受ける衝撃は凄まじく、現実はもっと悲惨であっただろうことが容易に想像できます。

また、戦場における脅威は「敵兵」だけとは限りません。

病気はもちろん、食糧難や水不足とも戦わなければいけませんし、場合によっては味方同士で争うこともあります。現代の価値観からすれば、これらのような身も蓋もない死に様は馬鹿馬鹿しく思えるでしょう。

しかし、戦争での死に様を美化させずに描くことで、戦争がもたらす虚無感を鮮烈に伝えています。これほどまでに戦争のリアルな息遣いを体感できる作品には、もう二度と出会えないかもしれません。

「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」を読んだ感想

月猫みなみ
つきねこみなみ

敵を倒すどころか、生きるだけで精一杯の戦場。

この場に自分がいたとしたら、腐らずにいられないと思う。だからこそ、物資も食糧も枯渇している状況のなか、他人に気遣える優しさを最後まで持ち合わせていた主人公には賛辞を送りたい。

今の日本を残してくれた英霊たちに感謝を伝えたくなる作品だった。

また、ペリリュー島から生還した日本兵の「話を聞けば体験していなくても描けるとお考えですか?」という言葉にも深い感銘を受けた。どうしたって漫画や映画は実体験よりも劣ってしまうわけだから、鑑賞する側も作品から戦争体験者の想いを汲み取る想像力と読解力が必要なのかもしれない。

戦争を知らない世代に是非とも届いて欲しい作品です。

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あとがき

2025年12月5日に「ペリリュー -楽園のゲルニカ-」の劇場版が公開されます。

11巻から構成される壮絶な戦いをどのように仕上げるつもりなのか、とても気になるところではありますが、個人的には動く田丸くんと吉敷くんに出会えることが何よりの楽しみです。

声優や入場者特典などの続報を心待ちにしながら、公開日まで待ちたいと思います。

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